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簡単に消えるもの

 就職活動をしている。

 

 働かなければ仕方がない。

 雲や露では生きていけない。だからといって、ものを書いて生きていけそうにもない。

 

 なんといっても、「それから」の代助のようには為りたくない。とはいえ、須永というコネを持った友達も居ない。漱石翁の如く、「一つ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで進んで行かなくってはいけないでしょう」。だから「自己分析」なるものをして、志望動機を語ってきた。

 

 ところがだ、このあいだ「圧迫面接」に出くわした。面接官はあっさりと志望動機を否定してきた。あれよという間に面接が終われば、なんと、自分の中から志望動機がさっぱりいなくなっていた。一体、どこへ行ったのだ。少なくとも、内定が出るまではいてもらわないと困る。それに、内定が出てもその気持ちがなければ働けない。その程度で消えるならば、そもそもそれは「志望動機」ではなかったのかもしれない。

 

 私は、どうも昔から自分の声を聞くのが苦手だ。小さい頃から、いろいろと噛み殺したことも少なくないからだろうか。

 最近は、どうにか声を聞くようにしている。まず、眼を瞑る。と、胸のあたりに、くしゃくしゃの茶紙の袋があらわれる。それをカサコソと開けると、小さな自分がいる。ちょいとつまみ出す。そして、眼前の現を見せて問いかける。「どう思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまり答えは返ってこない。

 

 さて、明日の朝も面接だ。

 何を言うか、全く以って定まらない。

 もう寝て終まおうか。